2017年から新しい外国人労働許可の制度として始まった中国の工作証の制度だが、この制度は若干誤解を受けている面がある。
それはランクに関する解釈である。
多くの方は、Aランク、Bランク、Cランクを階層的なイメージでとらえていると思うが、実はそれは間違った理解と言える。
弊社でお客様からよく受ける質問に、工作証許可が下りた後に「どのランクになりましたか?」という質問がある。
これは制度を理解していない方の質問となり、例えば申請時にAランクで申請した場合は、Aランクの条件に適合するかどうかを当局が審査するだけなので、結果として出てくるのはAランクの合格か不合格の判定だけで、当局がBランク相当と自動的にランク判定してくれる制度ではないのである。
そもそもこの「ランク」という言葉が誤解を生む要因であり、中国語原文だと「A類」「B類」「C類」という言葉が使われ、階層的な縦の区分ではなく並列的な横の区分を示す言葉が使われている。
当社としては日本語でも「A類」「B類」「C類」を使うほうが適当だと判断している。
「ランク」という言葉が浸透してしまったのは、恐らく最初に日本語訳した方の制度理解の誤解であり、制度が発表された当初に翻訳者やマスコミ記者の方々がこの制度を外国人に対する差別的な制度という印象を抱いたのかと思われる。
制度の発表当初は被害妄想的な姿勢で評価した記事も多く、排他的かつカースト制度的なランク思想がそこに投影された制度のように映ったのだろう。
しかし、この新しい制度は、それまで国内でバラバラだった外国人労働者に対する許可制度を整理したもので、一昔前には相当いい加減でゆるゆるだった制度を、諸外国並みに引き締めたという理解の方が正しいと思われる。
従って、一般の外国人労働者が労働許可(工作証許可)を申請する場合は大半がB類で申請することになり、当局ではB類の条件を満たしているかだけが審査される。
ちなみにA類というのは、中国に莫大な投資をする会社の経営者や、元オリンピック選手・元有名楽団団員などで中国人の指導や文化・技術の導入にあたるような高級人材の方が該当する。
その数多くある条件要項の一つとして大企業幹部などの高給取りの税金を沢山納める人も該当するので、その条件を満たしていると自ら判断すれば申請することが可能であるが、不許可となっても自動的にB類許可となるわけではないので、その場合はB類で申請し直すことになるのである。
つまり大ざっぱにいうとA類は国家レベルで求める指導者・経営者レベルの人材であり、B類は企業レベルで求めている専門職・労働者レベルの人材ということになろうか。
A類とB類では審査の扱いも異なり、A類は多くの書類の事前提出が免除され、宣言書へのサインを以て提出に代えられるなど簡略化されている。
そしてC類というのは、国家的事業やその他の事業のために外国から引き入れる臨時性の労働者や、頭数が欲しい場合の労働者などであって、多くの日本人がイメージする海外就職のイメージの許可枠ではないものとなっている。
従ってA類の条件を満たすような方ではない限り、日本人労働者が通常申請するのはB類であり、中国側が外国人をランク分けしているようなイメージはちょっと違うことをご理解をいただきたい。