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ビザ(居留証)手続き中の出張・旅行は出来れば控えたい

 中国では、原則として全国民が身分証の携帯を義務づけられているように、外国人もパスポートの常時携帯を義務付けられており、交通機関利用のさいやホテルの宿泊の際にはパスポートの提示が必要になっている。

 ただ、我々外国人は中国に無条件で滞在できているわけではないため、居留証(滞在ビザ)の新規手続きや、延長手続きの際にはパスポートを預ける必要が発生する。
(一定の条件を満たせば、予約により当日返却も可能)

 このように手続きによってパスポートを預けてしまうと、外国人は身分を証明する書類がなくなってしまうため、この間にパスポートの代わりとなる写真付き引換証が当局から発行される。
 この引換証の証明能力は結構高く、例えば携帯電話契約時の証明としても通用する。
 たださすがに金融機関での取引の際の証明書としては受け付けてくれないようでやはりパスポートが必要になり、手続きが終わって返却されるのを待つ必要がある。

 ところで、この引換証は、中国からは出国は出来ないが、国内移動は可能とされていて、飛行機への搭乗やホテルへの宿泊も可能と当局からアナウンスされている。

 ところがこの引換証だけを提示するだけではホテルに泊めていただけなくなりそうになったケースが最近報告されている。
この引換証の提示のほかに、ビザの情報や入国日の情報を要求されるようになったようである。

 恐らく宿泊登録システムの要求事項になっているのであろうと察せられるが、実は引換証上にはこれらの情報が載っていない。
 この報告されたケースでは、幸い本人がそれぞれのコピー画像を持っていたため、事なきを得たようであるが、持っていなかったらどうなったか分からなかったということのようである。

 よって、今後やむを得ず居留証(ビザ)更新中に外地宿泊をしなければならない時は、直近ビザの頁入国スタンプ印の頁、さらにパスポート本体の顔写真の頁について、更新手続きでパスポートを預けてしまう前にコピーを予め準備し、旅先へ携帯しホテルのフロントの要求に応じて提示することになるだろう。

 しかし、コピーはコピーであるため、それを情報証明として認めてもらえるかどうかは、地元当局の公安警察に判断に委ねられるため、場合によっては泊めていただけないケースも発生しないとは限らないようである。

 従って、居留証延長の手続きのために手元にパスポートがない状態の時はなるべく外地へは出かけず、手続きが完了するのを待つのが賢明なようである。
 ただもし、やむを得ず外地へ出掛けなければならない時は、上記のような資料を予め準備し、万が一の要求に答えられるよう予め準備したほうが良いであろう。
 (せめてスマートフォンで画像撮影だけでも最低限度やっておきたい。)
 やや整合性の取れないように見える中国のこの制度運用であるが、身を守るためには万が一を想定して自ら防備することが大事なのである。

居留証の手続き中はホテル滞在からチェックアウトしないこと

 居留証(居留ビザ)のために、必要な資料として臨時宿泊証明(境外人員臨時宿泊登記単)というものがあり、以前取得ルールについては説明したが、居留証の新規取得や延長の際のこの書類の要件が若干厳しくなったようだ。
 
 自分や会社で家を借りて住んでいる方の場合は従来通り変化はないが、問題はホテル住まいの方である。

 ホテル形式の住宅に住まわれている方も、やはり賃貸住宅同様に臨時宿泊証明は発行されるが、原則として長期契約ではない可能性があるとして、申請後に当局から実際に滞在しているかどうか調査が入るようである。
 つまり、居留証の新規や延長時の申請時に滞在している書類を提出しても、申請後の審査期間中にチェックアウトしてしまうと、滞在が証明できないことになり、手続きがストップしてしまうことになるようだ。

 まあ、ホテルをチェックアウトしてしまっても、新しい滞在先で手続きを怠らなければ取り立てて大きな罰則にはならないようだが、居留証の申請手続き自体はやはりやり直しとなる。

 従って、少なくとも申請手続きが終わってパスポートが返却されるまでは、申請に使用したホテルからはチェックアウトしないことが賢明だろう。

 もちろん中国の法律としては、居留証は定住者のための許可になっていることから、手続き期間終了後もホテルを容易に変更して良いとはなっておらず、建て前上はホテルを変える度に、変更届を出さなければいけないとなっている。
 ただそこは「中国で引越しをした時の手続き」でも書いた通り、上海などではそこまで厳しい運用になっていないため、派出所に住所変更の届けさえしておけば、居留証自体は1年に1度の延長時に変更を報告すれば、現状の運用では大きな問題にはならない。

 いずれにしても居留証を手続きする上で、住所(臨時宿泊証明書)は重要な基礎的要件となるため、しっかりと滞在拠点を確保することが重要で、長期出張の方でも拠点確保は怠らないほうが賢明のようだ。

紛失時に備えてパスポートやビザは画像データの分散保管を

弊社のようにビザ関連のお仕事をさせていただいていると、パスポートを失くしてしまったという相談が時々寄せられる。
 パスポートを紛失した場合ついては、上海なら在上海日本国総領事館で再発行の手続きか、出国するための通行証の発行を依頼する手続きとなる。
 この辺りは、領事館サイトの方で詳しく説明されているので、手続きが必要になってしまった方はそちらを読んでいただきたい。

旅券を紛失(盗難)、破損(焼失)した場合の手続き(在上海日本国総領事館公式サイト)

 またその後もビザが必要な場合は、ビザ(居留証)も再発行の手続きを行えば、原則として旧パスポートに貼られたものが補完発行される。

 ただ、その手続き際に出来れば有ったほうがよいのが紛失前の情報。

 もちろん紛失したという事情が事情なだけに、必ずなくては手続き出来ないという性質のものではないが、やはり有ったほうが手続きはスムーズとなる。
 特に、パスポートの写真頁、現在有効なビザのページ、中国に入国した際に押してもらったスタンプ、或いは自動入国ゲートの場合は入国日が記載されたレシートなどの情報はコピーをは持っていたほうが良い。
さらに工作証と、QRコードの中身の内容もあればベストである。

 これらについては、コピーに限らずスマホで写真を撮って、PDFかJPGなどの形式でファイル化をして、自分のスマホ、或いはクラウドストレージ、自宅のPCなどに何カ所か分散して保管し、いざというときに。引き出して人に見せたり、プリントアウトできるようにしておければ良い。

 これらの書類があると、万が一パスポートを失くした時に、手続き証明書類として非常に効果を発揮し、スムーズに手続きが進む。
 逆にこれらの写真すらないと、改めて証明書類の提出を求められるなど、資料集めなどに思いのほか、時間がかかってしまうことになり、仕事や移動などに支障が生じかねないのである。
 出来れば、複合プリンタのスキャナーを使って、きれいにスキャンしておけば、通常のビザの延長の際にも役に立つので、データを会社の共有サーバーなどにビザ資料として保管してもらっても良いかもしれない。
 
  いずれにしても、コピーや写真はそれ単体で証明能力がそれほど高いものでは無いが、いざというときにはやはり証明力を発揮してくれるので、重要な書類については写真をこまめにとる癖をつけておいた方が良いのである。

中国で引越しをした時の手続き

 派遣駐在でも自主就職でも、中国に数年住み続ける間に引っ越しをするケースは時々出てくる。
 家賃の値上がりだったり、部屋の不具合だったり様々な理由があると思われるが、外国人として中国に住み続ける限り、引越しをした場合はやはりそれなりの手続きを取る必要がある。

 まず一番重要なのは、新住所の届け出である。
 届け出方法などは、以前下記に記したが、引越しを完了した日から大よそ10日以内に届け出る必要があり、遅くとも1か月を超えてはならず、あまり長く放置しておくと当局から罰則を受ける可能性がある。

臨時宿泊証明書(境外人員臨時宿泊登記単)の届け出・取得の基本ルール

そしてビザ関連の手続きであるが、地域によって運用が異なるが、概ね上海以外の地域では、引越し後およそ10日以内に情報変更を届け出ろとしている地方政府が多く、中国の法律的要求も同様に定められている。
 当然のことながら工作証と居留証の両方の届け出をする必要がある。

 しかし外国人の多い上海市では、引越しの度に届け出を受け付けていては業務が煩雑になるためか、ビザに関しては特に強い要求となっておらず、1年に一度の更新時に提出するだけで特に咎められることはない。

 ただ窓口によっては新人の担当者がルール通り杓子定規に要求する場合もあり、その場合は窓口を替えてみるなどの対応を取るとたいていはスムーズに行く。

 よって、引越しをした場合は、少なくとも住所届を行っておくべきであり、その他の工作証や居留証の変更手続きについては、上海市内間の引越しであれば特に必要はないが、もし心配であれば地元の窓口に手続きの必要性を確認しておけばまず間違いのないところかとは思われる。
 ただ尋ねれば、必要だと返されるヤブヘビになる可能性もあり、その判断は難しいところではある。

兼業期間は業務期間として数えられない

 中国へ来る方の中には色んな業務経歴を持つ方がいて、我々もその都度ご本人の仕事の過去の内容を尋ね、工作証の許可申請内容に適合するように当社ではコンサルティングを行っている。
 そういった業務経歴を見る中で、時々複数の業務の期間が重なって兼業状態になっているような方も時々見受けられる。

 しかし、中国側が業務経歴年数の証明書類を判断材料として提出させているのは、その業務における専門家度合のモノサシとして利用しているということであり、残念ながら兼業期間の業務経歴は専門家度合を測るための基準としては認められなくなってしまうようだ。

 当局が実際そう説明したわけではないが、やはり兼業状態では業務への専門度合が浅いと判断され、その業務に対する専門性に疑いが生じてしまうと見られているようなのである。
 確かに感覚的にもフルタイムで2年働いた正社員と、パートタイムで2年兼業している方の業務能力は同じレベルでは評価できないのであり、当局もそのような見方をしているのであろう。

 あくまで我々外国人は、その業務における専門家として就業が許可されているのであり、専門度合いが浅いと判断された人間は受け入れてもらえないのである。
 よって、業務経歴を提出する場合は、複数の業務の業務期間が重ならないように注意する必要がある。

 ただ、万が一兼業期間が存在していた場合でも、どちらかの経歴を捨ててしまえば、兼業状態には見えなくなるともいえる。

 もちろん、その捨ててしまった経歴は二度と中国のビザ申請には使えなくなるが、兼業と判断されることはなくなるということになる。

 幸い現在の制度では、専門度合いを測るテストがあるわけもなく、在籍時のタイムカードを見せろということもないので、当時の雇用主に責任を持って在籍事実を証明していただければ、それ以上の証明義務ないのである。
 近年、日本では副業も認められるケースも増えてきたが、中国では業務の専門家であることが許可条件となっているため、器用貧乏ではダメであることを覚えておいていただきたい。

居留証延長申請時の営業許可証の提示が不要に

中国での手続きルールはめまぐるしく変更されるのが常だが、どうやら居留証延長申請時における営業許可証の原本提示が不要になった模様。
ただし、これは延長申請に限る措置のようであり、新規の申請や会社変更など大きな情報の変更があった場合はやはり、これまで通り営業許可証の原本提示が必要になる。
営業許可証の原本は、どの会社にとっても会社の根幹にかかわる資料なので持ち出しを渋る会社様も少なくなかったが、今回ようやくその負担が減ったことになる。

このルール変更の要因としては、居留証申請時に提出する工作証情報の存在が大きいとみられる。
工作証カードはそもそも個人携帯する資料だが、中身の情報は当局サーバーによるセンター管理になったため、偽造の可能性がほとんどなくなり、会社による信用性を担保する必要がほとんどなくなったということが大きいだろう。
それにより、会社の確認(営業許可証の原本提示)はその会社における最初の申請時のみになり、延長時は不要になったと察せられる。
とはいえ、朝令暮改で変わる中国のルールのことであり、またいつ必要とされるかわからないのが実情であり、当面はやはり営業許可証も準備しておくほうが無難ではある。

また、今回この変更を確認できたのは上海における手続きのみであり、総じてビザ関連に関する手続きについては上海は他の地方に比べ比較的外国人に優遇が図られているため、上海以外における手続きにおいてはフレキシブルに対応してもらえない場合が多く、それぞれご当地の役所の指示に従って頂きたい。

中国のビザ申請時に台湾経歴を持つ方はご注意を

 日本人ならほとんどの方は存じていると思うが、台湾は現在中華人民共和国の領土であるが、政府が認めていない勢力が非合法に行政を行っているという扱いになっている。
 従って中国のビザを申請する際に、台湾滞在歴を持つ方は注意をする必要がある。
 
ノービザなどで台湾に観光滞在されていた方などは特に問題は無いが、問題となるのは台湾で就労ビザなどを取得し働いていたような場合である。

 このような場合、北京政府から見ると同政府の統治する領土に「非合法勢力と関係があり領土に勝手に滞在していた」という解釈が成り立つようで、不法滞在或いは、非合法組織と関係がある外国人として区別されてしまうようである。

 故に台湾のビザが貼られたパスポートを持つ方は、そのままでは居留証の申請が拒否されてしまう。

 ならばどうすればいいか?

そのような経緯を持つ方は非常に面倒くさくはあるが台湾行政府の発行したビザの貼られたパスポートを更新して、台湾ビザの無い真っ新な状態にする必要がある。
 こうすることにより、表面上は非合法行政府と関係がないことになり許可要件が整ったという扱いになるようのである。

 この台湾障壁は学歴などには適用されないようで、台湾の大学を卒業した経歴は「中国国内の大学の経歴」として使える。

 ただし、この学歴認証に関しては台湾関連の特別な機関を通して行われるようで、建前と実態とのすり合わせるためのような組織が存在する。

 このあたり国際関係のバランスによって扱いや手続きは都度変化するので、許可要件についてはなかなか一律にこうであると断言できない状態になっている。
 しかし、北京政府が台湾の行政府を認めていないことには変わりなく、転勤などで台湾から中国大陸側に異動してくる場合は十分注意が必要である。

工作証(ビザ)に関する承諾書の宣誓事項を守れなかった場合のペナルティ

 2017年の中国の新労働ビザ制以降、手続きの課程において多くの新しい処理が生まれている。

 その中で多用されるようになったのが承諾書という方式。

 これは必ずしも全ての人が経る過程ではないのだが、例えば以前ご紹介した「倒置式」の手続きの場合、先に居留証を手続きする際に「居留証が発行されたら工作証を提出します」という承諾書を提出させられる。

 またポイント制を適用して審査を受ける場合は、雇用元との月額報酬の報告の取り決めについて「翌年の更新の際に対象期間の納税証明書を提出します」という承諾書を提出することがある。
 このほかにも幾つかの承諾書が存在するが、いずれの場合も承諾書内で宣誓をした内容を後から実行しますという内容である。
 そして、承諾したからにはこの宣誓内容を守って実行することが大原則となる。

 では、承諾書の内容を万が一守れなかったらどうなるか?

 これはそれぞれ、役所側で対応方法が定められている。
 
 まずいきなり罰則を食らうことはまずなく、段階的に承諾内容を守るよう促される。

 卒業証明書などの書類が未提出であれば、一定期間内に書類を提出するように求められることになる。

 また月額報酬に関する承諾書に対しては、翌年のビザ延長申請時に就労期間分の納税証明書などをバウチャーとして求められる。

 この際、納税額が不足…つまり賃金を過少申告していたような場合は、追加納税して不足額を補填しろと求められ、不足したまま逃げきれない状況を示されてしまうのである。

 もし、この不足分を追加納税しなければ工作証(就業許可)の延長が認められないことになる。

 更に、延長が認められないばかりか、承諾書の内容を守らなかった企業や個人はブラックリストに名前が載ってしまうことになるようだ。
 
 仮にブラックリストに名前が乗ってしまうと、以降いかなる「承諾書」も受け付けてくれなくなり手続きに支障が生じ、その会社における他の外国人雇用に関する手続きにも影響が及ぶ可能性があることになってしまう。

 また本人側に落ち度がなかったとしても、別の会社に就職する際に申請できなくなる可能性もありうるのである。

 従って、いずれの場合でも承諾書を提出した内容については、その意味を軽く見ず、覚悟を持って提出する必要があるのである。
 皆様十分気を付けられたし。

工作証は取得も時間がかかるが取消にも時間がかかる。

 2017年にスタートした中国人の就業許可に関する手続きに時間がかかるようになったことは何度かお伝えしているが、実は取得時同様に取消にも時間がかかるようになっている。

 要するに取得時同様に、書類をアップロードして予備審査を受け、その予備審査が通過してから実際の書類を提出するという手順が、工作証の取消手続きにおいても新制度では採用されている。

 このため、従来の就業証の手続きであれば、直接書類交付だったので5営業日(=約1週間)程度で手続き完了となっていたが、新手順においてはネットでの書類を審査する予備審査が5営業日、その後に実際の書類を提出して審査を受ける本審査に最大10営業日が必要になっている。

 実際にはここまでフルに時間がかからず早めに処理が完了することが多いようだが、実際早く終わるかどうかは天任せでしかなく、やはり最大時間を念頭において手続きを進める必要がある。
 ただ、このように工作証許可の取り消しに時間がかかる現状になったとしても、駐在員の帰任のように、いくら取り消しに時間がかかろうとも帰任する本人にとってはほとんど影響がない。
手続きに本人に関わるのはほんの最初だけで、あとは現地スタッフに任せることが出来るからである。

 これに対して、中国国内で転勤や転職をするような場合は、大きな影響が出てくる。

 中国国内で転勤や転職をする場合は、前職の退職日から10日以内に工作証の取消申請を行い、1か月以内に新規の会社での工作証の申請を開始しなければならなければ新規申請扱いになってしまうという時間的制限が加えられている。
 (居留証については公安部で変更事項について10日以内に届け出ろという規定があるが、転職を伴う場合は物理的に間に合わないので、別途の処理を経る必要がある)

 この日程を考えると、離職直後から手続きを開始しても、一か月以内に新勤務先の工作証の申請を開始するためにはそれほど余裕があるわけではなく、かなりギリギリとなる。

 また手続きは営業日でカウントされるのに対して、ほとんどの日数制限規定は暦日で定められているため、春節や国慶節など長期連休が絡む場合は間に合わなくなる可能性が大である。
 それゆえに、退職時期や入社時期を配慮する必要があるのである。