中国の労働ビザの許可条件は「優秀な人」

 どこの国でも同じだが、国家や政府が産業政策や労働政策として基本に掲げるのは自国の産業発展と労働者の保護であり、どこの国の政府でも失業率改善に躍起になっている。
 それは中国でも日本でも同じことであり、特に日本は世界の中でも厳しいビザ発給制限が加えられ、国家の政策による特殊なケースでの入国以外は、なかなか就労のための日本入国は認められにくい。

 それに対して、中国は経済発展がやや遅れてスタートしたこともあり、外国からの投資を積極的に受け入れようとする結果から、外国人労働者の受け入れ、つまり労働ビザ発給に関しては日本のそれより寛容となっている。

 しかし、勘違いしてはいけないのは中国が必要としているのは国家の経済発展にとって必要な「優秀な人材」であり、外国人を無制限に受け入れようとしているわけではないということ。
 つまり中国人でも出来る仕事をわざわざ外国人1人を受け入れて雇うということは、形として中国人の職を奪うという意味になるので、認められないことになるのである。

 よって、外国人が外国人として中国で働く際には雇用側に「中国人ではなく外国人を雇う理由」が必要になり、それ故に国家の経済発展に必要な「優秀な人材」という評価が求められることになる。 

 もちろん「何が発展に必要」で「何が優秀」かは、なかなか一口に言えるものでは無いが、「優秀な人材」と評価する為の線引きの一つのモノサシとして決められているのが、中国では「大学卒業」と「2年以上の就労経験」という条件となっている。
 「大学卒業」というのは、一定の専門知識を履修したという証明であり、「就業経験」というのは仕事が出来る人材という評価になる。

 まあ大学を卒業したから優秀か?とか、業務経験が2年あれば優秀か?という実質的な中身の疑問は残るが、東大であろうが三流大学であろうが大学は大学であり、首席で卒業しようがお情けの卒業であろうが「大学卒業」であることには変わりがない。

 同じようにアルバイトだろうが公務員だろうが、労働経験として数えられるなら「就労経験」である。

 つまり書類上では何れも「大学卒業」と「就労経験」としか数えず、書類さえ整えばまずは「優秀な人の基準」をクリアしたことになり、その背後の現実まで追跡調査されることはないのが実態である。

 もちろん、就業許可申請の書類提出時に履修した学科や経験した職務と採用された職務がかけ離れている場合は、その職責にとって本当に「優秀な人材」かと問われることはあるし、中国人ではなく外国人を雇う理由が明確に説明できないと「必要な人材」とは認められず、外国人を雇わず中国人を雇えと言う判断がされてしまう可能性はある。

 故にとにかく就労ビザ(居留許可証)を許可してもらうための必要な条件は、国内の中国人では出来ない仕事をやれる「優秀な人」であることを「書類上で証明する」ことに他ならないのである。

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